大阪家庭裁判所 昭和40年(家)3557号 審判 1966年2月10日
申立人 川田宏男(仮名)
右法定代理人親権者母 川田てつ子(仮名)
相手方 藤山之男(仮名)
主文
相手方は申立人に対し、扶養料として、昭和四〇年一一月から申立人が満一八歳に達する月まで毎月金五、〇〇〇円づつを毎月二五日かぎり申立人住所に送金して支払をせよ。
理由
(申立の要旨)
申立人代理人は「昭和三七年(家)第二九八八号扶養料増額申立事件について、大阪家庭裁判所が、相手方に申立人の扶養料として一ヵ月金四、五〇〇円の支払を命じた審判を、一ヵ月金六、〇〇〇円に増額変更すること」を求め、その理由として、申立人は前記審判時は幼稚園に通園していたが現在は小学校二年生に在学して何彼と費用もかかるので扶養料の増額を求めるため本件申立におよんだというにある。
(当裁判所の判断)
一、当裁判所に顕著な事実
(1) 申立人と相手方間の当庁昭和三三年(家イ)第四七号扶養調停事件において同年三月三一日調停が成立し、その、調停条項第一項(ロ)において、「相手方は申立人に対し扶養料として昭和三三年四月以降申立人が満一八歳に達する月まで毎月二五日限り金二、五〇〇円づつを申立人住所に送金して支払う」旨の合意が調つたこと。
(2) その後申立人は相手方に対し、昭和三四年九月一五日扶養料増額の調停を申立て(当庁同年(家イ)第二〇四二号調停事件)、調停不成立の結果、同年(家)第六二八〇号審判事件として審判に移行したところ、昭和三五年二月二〇日上記調停条項の扶養料を昭和三四年九月二八日以降申立人が満一八歳に達する月までの間、一ヵ月金三五〇〇円に変更する」旨の審判がなされ、同審判は確定した。
(3) ついで申立人は相手方に対し、昭和三五年七月五日さらに扶養料増額の調停を申立(当庁同年(家イ)第一四八二号調停事件)てたが、調停不成立となり、同年(家)第四五五三号審判事件として審判に移行したところ、同年一〇月二一日上記(2)の審判以後特段の事情変更なしとの事由で却下の審判がなされ、同審判も確定した。
(4) ところが、申立人は相手方に対し、昭和三六年九月一二日またまた扶養料増額の調停を申立て(当庁同年(家イ)第二一一二号調停事件)調停不成立の結果、昭和三七年(家)第二九八八号審判事件として審判に移行したところ、同年六月二六日「上記(1)の扶養金額を昭和三七年六月以降申立人が満一八歳に達する月まで一ヵ月金四、五〇〇円に変更する」旨の審判がなされ同審判も確定した。
(5) そして、さらに、申立人は相手方に対し、昭和四〇年三月一三日扶養料増額の調停を申立て(同庁同年(家イ)第五五一号調停事件)、その手続において相手方が金五〇〇円の増額を認めたのに対し、申立人親権者は上記申立要旨記載の金額を固守して譲らなかつたため調停不成立となり、本件審判に移行した。
本件申立に至るまでの上記経緯は当裁判所に顕著なところである。
二、事情変更について
そこで、前記昭和三七年六月二六日当裁判所がした審判(上記一、(4)記載、以下単に前審判という)以後の双方の事情変更の有無につき、調査したところ、次の事実を認めることができる。
(一) 申立人について
(1) 申立人は、前審判直後、幼稚園に在園し母てつ子と二人で、母の兄川田市郎所有の肩書店舗付住宅に居住し、てつ子が市郎名義で経営するたばこ小売業によつて得る純益一ヵ月約金七、〇〇〇円と、前審判に基いて相手方から送金される扶養料月額金四、五〇〇円により母子の生活を維持してきた。
(2) 現在、申立人は小学校二年に在学し、相変らず母てつ子と前同所に居住している。てつ子の収入は上記たばこ小売および駄菓子小売業によつて得る利益である。そこで利潤につき検討するに、
(イ) 日本専売公社竜野出張所長作成の「たばこ小売人川田市郎の販売実績について」と題する書面によれば、事実上の売捌人川田てつ子のたばこ販売額は前審判時以降しだいに上昇しつつある。ちなみに、昭和四〇年三月から同年八月までの売上高をみると、その合計額は金九九万一、一五〇円であり、利益率は同小売人の場合売上高の一割であるから、同期間中の利益は金九万九、一一五円であり、これを月額平均に計算すると、金一万六、五一九円<A’>となることが認められる。
(ロ) また、駄菓子小売の純益は、仕入もしくは売上に関する資料が得られないのでその額を正確に把握しえないが、子供相手の商いで雑然と陳列された商品の数も少いところから考えると、おそらくその売上高はそう多い額を望めないし、したがつて、純益もせいぜい月額金二、〇〇〇円~三、〇〇〇円位ではなかろうかと推測される。とすれば、月平均金二、五〇〇円<B>位の純益があるものとみるのが相当であろう。
そうすると、上記<A’>および<B>を合算した金一万九、〇一九円がてつ子の一ヵ月の平均収入ということができるから、これと相手方から送金される扶養料金四、五〇〇円を加算した金二万三、五一九円が申立人とその母の生活を支える費用ということができる。
(3) てつ子には上記収入のほか資産としてみるべきものがない。またてつ子の借金は、申立人が昭和三八年一二月高熱を出した際の治療費残が金八〇〇円残つている以外に存在しないけれども、家庭生活と家業に失敗した市郎からしばしば居住家屋とたばこ販売業の引渡を請求され、てつ子はその延引策として市郎に対する財産的な心遣を余儀なくされることがある。
なお、医師中川なかの診断書によれば、てつ子は頻発月経のため過労および冷却をさける要ありとされ、健康保持に通常人以上の費用を要することが認められる。
(4) てつ子は申立人の一ヵ月の生活費に金一万二、三四六円を必要とする旨の明細書を提出しているが、おやつ代金三、〇〇〇円は相手方等家族の後記生活程度に比べて使いすぎであるし、その他日用品の項目についても実際にそれだけ必要かどうか疑問を抱くものも散見される。(例、鉛筆代一〇〇円、歯みがき粉一五〇円等)
(二) 相手方について
(1) 相手方は前審判直後、母スミ、妻律子、長女和子(昭和三四年一二月二六日生)とともに肩書住所地に居住し、スミが亡夫の遺族扶助料年額金九万六、三六〇円で自活できたので、相手方夫婦および長女は、相手方が国鉄から支給を受ける手取平均月額金二万二、七九一円(基本給二万七、七〇〇円)に年三回の期末手当月額金七、九一一円相当を加算した金三万七〇二円の収入から、前審判によつて定められた月額金四、五〇〇円の扶養料を差引いた残額金二万六、二〇二円と、律子が商店の手伝によつて得る若干の内職金により生活を支えていた。
(2) ところが、相手方のその後の家族構成は、昭和三九年二月七日長男一男が出生し、また、約三年前から胃癌を患つて近時病床にあつたスミが昭和四〇年一〇月八日死亡したため、現在は夫婦と子供二人の家族に変更を生じた。スミが病気になつてからは律子が同人の看病と育児に追われて内職にも出られなくなり、家族の生活は専ら相手方の収入のみに頼つている。ところで、相手方は国鉄新幹線大阪車掌所に乗客専務車掌として勤務しているので、その収入の点につき、大阪車掌所長作成の給与証明書および当庁調査官植田舜二作成の調査報告書ならびに電話聴取書によれば、
(イ) 昭和四〇年三月から同年八月までの差引支給額(基本給金三万九、二〇〇円、暫定手当、扶養家族手当および超過勤務手当の合計額より弁済金、保険金、天引貯金、共済掛金、税金および会費などを控除したもの)合計は金一五万四、三五〇円であるから、これを月額平均にすると金二万五、七二五円(<a>)となる。
(ロ) 上記合計支給額から控除されている項目のうち、団体保険(貯金に匹敵)金二、一五〇円、共済貯金一、八五〇円および労組貯金二〇〇円合計金四、二〇〇円(<b>)は任意のものであるから手取収入額に加算すべきである。なお、貸付弁済金月額約五〇〇円は昭和四〇年八月分でその支払を完了した。
(ハ) 相手方には上記給与の他実働に応じ乗務手当が支給され、昭和四〇年六月から同年八月までの支給合計額は金二万五、五七〇円であるから月額にすると平均金八、五二三円支給される計算になるが、係員の説明を参考にすれば乗務についての特別出費を控除する必要があるから手取金額は約半額金四、〇〇〇円位(<c>)であろうと思われる。
(ニ) なお、相手方には年三回の期末手当等が支給され、昭和四〇年度分の合計手取額は金一五万五、八五〇円であるから月額平均にすると金一万二、九八七円(<b>)となる。
ことを認めることができる。
(3) そうすると、相手方の一ヵ月の手取収入は上記<a><b><c>および<d>を加算した金四万六、九一二円であるが、同金額から申立人に対する扶義料金四、五〇〇円を控除した残金四万二、四一二円が相手方およびその家族に振向けられる生計費ということができる。
(4) 相手方は異母兄藤山久男から譲渡を受け手続費用の関係で所有権移転登記未了になつている肩書地所在の土地および住居を所有しているが、その他には資産はない。むしろ、相手方には前審判認定のように、相手方が現実逃避的な生活態度をとつたことと、上記てつ子が必要以上に相手方の職場や家庭に押しかけて相手方の生活秩序を乱したことが原因して生じた賭事による負債があり、その整理と生活費を補う意味で昭和三九年一〇月共済組合から金八〇万円を借用して上記負債等の弁済に充てたのであるが、そのために新たに同組合に対する残債務約七八万円が未払になつている。しかし、同債務は割賦弁済の方法により逐次返済がなされつつあり、上記(2)(イ)記載の控除額中に含めて計算してあるので上記認定の相手方手取収入額には影響を及ぼさない。
前審判以後の双方の事情変更は以上認定のとおりである。
三、扶養料増額について
申立人が相手方の認知を受けた非嫡出子であることは上記各審判ならびに調停調書により明らかであるから、相手方が申立人を扶養する義務があるのは勿論であるが、一方相手方は同居している妻とその間の嫡出子二人を扶養する義務を負担している。また、てつ子が親権者として申立人を扶養する義務を有することは申すまでもない。
そこで、相手方の申立人に対する扶養の程度を判断するために、試みに労働科学研究所が東京都内での実態調査をもとに作成した総合消費単位(別表)と総理府統計局の平均消費者物価指数(昭和二七年は八一・一 昭和四〇年は一三五・一)に準拠して双方の生活程度を算出してみると、(ただし、東京、大阪、竜野では多少その数値が異るが、その点は考慮しないこととする)
(イ) 先づ昭和四〇年の最低生活費が金一万一、六六〇円であることは算数上明らかであるから、
てつ子と申立人との最低生活費は
11,660円×(95+55/100) = 17,490円
相手方とその家族の最低活生費は
11,660円×(115+80+45+40/100) = 32,648円
であり、てつ子および相手方の前記認定の生活費がいづれも最低生活費を上廻つていることが明らかである。
(ロ) さらに、双方の生活程度を比較してみると、
申立人は23,519円×(1/95+55) = 156円79銭
相手方は42,412円+(1/115+80+45+40) = 151円47銭
となるから、計数上は申立人の方が相手方の家族より経済的にやや恵まれた生活をしていることになる。
そこで、以上認定した事情、とくに申立人側に前説示二、(一)(3)記載のような特殊事情があつて、申立人らの実生活の面では上述計算どおりの生活をなしえない実情にあること、相手方は前説示のように昭和四〇年八月をもつて月額約五〇〇円の分割弁済金の支払を完了し、翌九月よりその分だけ前記手取収入が増加したこと、相手方の母スミが昭和四〇年一〇月八日死亡し妻律子の肉体的負担も幾分軽減され、落着き次第軽い手内職に就けるようになつたことなどの事情を勘案すれば、相手方は申立人に対し昭和四〇年一一月から月額金五〇〇円づつを前審判に定めた扶養料に増額加算して支払うのが相当であると思料する。
四、むすび
よつて、前審判を上記認定のように変更することとし、主文のとおり審判する。
(家事審判官 寺沢光子)
別表
労研の「総合消費単位(都市)」抜粋
性 別
労動 の 種 別
六〇歳未満
既婚男子
軽作業以下
中等作業
重作業
激作業
一〇〇
一〇五
一一五
一二〇
既婚女子
主婦
軽作業
中等作業
重作業
八〇
九〇
九五
一〇〇
就勞しない未婚女子
九〇
生活の中心者でない未婚男女
一一五
学齢・年齢別
男
女
大学生
一〇五
一〇〇
高校生
九五
九〇
中学生
八五
八〇
小学四~六年
六〇
小学一~三年
五五
四~六歳
四五
一~三歳
四〇
〇歳
三〇
労研の東京都調査(昭和二七年八~一〇月)結果による最低基準
消費単位一〇〇につき
最低生存費
最低生活費
四、〇〇〇円
七、〇〇〇円
参考
更正審判 (大阪家裁 昭四〇(家)三五五七号 昭四一・四・八審判 取消変更)
抗告人 川田宏男(仮名)
右法定代理人親権者母 川田てつ子(仮名)
相手方 藤山元男(仮名)
主文
原審判はこれを取消す。
相手方は抗告人に対し、扶養料として、昭和四〇年一一月から抗告人が満一八歳に達する月まで毎月金五、三〇〇円ずつを毎月二五日かぎり抗告人住所に送金して支払をせよ。
理由
第一、本件抗告申立の適否について
本件記録に照すと、当裁判所が、昭和四一年二月一〇日抗告人、相手方間の昭和四〇年(家)第三五五七号扶養料増額申立事件についてした審判(以下原審判という)は、同年同月一九日抗告人法定代理人に、同月一五日相手方にそれぞれ送達されたこと。当裁判所は、同年同月二三日および翌二四日、抗告人法定代理人が提出した原審判官および書記官を宛名人とする書信を受付け、同書面には抗告人法定代理人には借金があること、事業税を差引くと一ヵ月のたばこ売上純益は金六、〇〇〇円~三、〇〇〇円であること、物価高のため原審判認定額では親権者てつ子が抗告人を立派に養育できないからもつと増額して欲しいという趣旨が述べられ、その資料若干が同封されてきたこと。そこで、原審判官は、同年二月二八日抗告人法定代理人に対し、本書面到達の日より七日以内に前記書面は即時抗告を申立てるものかどうか、また、即時抗告を申立てるものであるとすれば、所定の印紙を貼用するよう補正命令を発したところ、同書面は同年三月二日抗告人法定代理人に送達されたこと。抗告人法定代理人は、上記命令に基き所定印紙を同封し原審認定の扶養料の増額を求める趣旨の書面を原審判官および書記官宛に送付し、同書面は当裁判所において同月八日受付けられたことを認めることができる
上記認定の事実によれば、抗告人法定代理人は、前記補正命令に基き所定印紙を貼用するなどして昭和四一年二月二三日受付にかかる書面を補正したものと認められるから、同書面を以て原審判に対し適法な即時抗告がなされたものとして扱うべきである。
第二、再度の考案の可否について
ところで、家事審判に対し即時抗告の申立がなされた場合、原裁判所が再度の考案をなしうるか否かについて、当裁判所はこれを積極に解する。けだし、家事審判法第七条によれば、家事審判には特別の規定もしくは審判の性質に反しない限り非訟事件手続法第一編の規定の準用があり、同法第二五条によつてさらに、抗告については民事訴訟法の抗告に関する親定が準用されていること。そして家事審判法に民事訴訟法第四一七条第一項の規定を排斥する規定がなく、家事審判規則第一九条も民事訴訟法の再度の考案制度に何ら抵触しないこと。抗告を理由ありとするときは原裁判所に更正の審判をさせる方が訴訟経済に合致するものであることの理由による。
第三、本件抗告の当否について
原審判以後抗告人の提出した兵原県たばこ信用組合理事溝江利男作成の昭和四一年二月二二日付証明書、千田商店作成の貸金証明書、全国たばこ販売生活協同組合作成の課税所得控除損害保険料証明書、竜野たばこ商業協同組合会計矢野健一作成の領収書、同上組合理事長溝江利男作成の「昭和四〇年のたばこ買受金額について」と題する書面日本専売公社竜野出張所長作成の「たばこ小売人川田市郎の販売実績について」と題する書面、竜野市長作成の「市民税などの照会について回答」と題する書面、当庁調査官植田舜二作成の再調査報告書ならびに原審判に列挙した各資料を綜合すると、次の事実が認められる。
(1) たばこ小売業務は、小売人が日本専売公社から常時、一応、定価の一、〇〇〇分の九二〇(一、〇〇〇分の八〇引き)で買受け、これを消費者に定価で販売するものであるが、その利益率は年間販売額が一四四万円までは一、〇〇〇分の一〇〇、一四四万円を超え六、〇〇〇万円までは一、〇〇〇分の八〇、六、〇〇〇万円を超える部分は一、〇〇〇分の六〇である。したがつて、定価から上記利益率を差引いた額が買受価額になるから実際の取引は年間売上額を基準にして上記利益率を計算し前記買受価額に過不足がある場合には年度末にこれを精算する仕組みになつている。そして、小売人の専売公社に対する買受代金の払込みは、たばこ業者を主体とする金融機関、本件の場合は兵庫県たばこ信用組合に小売人の当座預金口座を設定し、小売人が同組合の集金人を介して預金した中から、たばこ配給当日現品と引換に小切手で専売公社に代金を支払うわけであるが、小売人が当座預金を怠つたときは上記組合が融資し、小売人はそれに対して金利を支払わねばならないことになる。また、たばこ売上の事業税は、日本専売公社大阪支社管内の場合は、売上高一〇〇円につき六円一二銭が課税の対象にされるが、小売人との個人折衝で別途に控除されるものも存する。
ところで、抗告人法定代理人は川田市郎名義でたばこ小売業を営み昭和四〇年度(一月~一二月におけるたばこ総売上額は金一九七万七、九〇〇円であるから、その利益率を上記算定の方式に従い計算すれば金一八万七、〇三二円(<A>)の利益を得たことになる。しかし、一方、抗告人法定代理人の支出面を検討すると、先ず、必要経費として、課税所得控除損害保険掛金六六〇円、竜野たばこ商業協同組合賦課金三、七四〇円、同組含費金二〇〇円、兵庫県たばこ信用組合当座貸越利息昭和四〇年度分金四、一二〇円、以上合計金八、七二〇円(<B>)を考慮しなければならない。また、抗告人法定代理人は川田市郎名義で上記営業を営んでいるので、同人名義の納税額につき調査したところ、所得税、事業税ともに負担してなく、市民税金二〇〇円、県民税金一〇〇円、合計金三〇〇円が課税されているが、これは市郎自身が負担して抗告人法定代理人は支出していない。なお、抗告人法定代理人の債務について市郎名義で兵庫県たばこ信用組合に昭和四〇年一二月末現在金四万六、〇〇二円の債務が存するが、抗告人法定代理人が現物(たばこ)を所持するか、もしくは消費者に売掛債権を有しているかしているわけであるから、同債務はいわゆる負債として考慮しない。この他、抗告人法定代理人は知人千田鳳万から約金二、三万円の借金をしてこれを月額約金一、〇〇〇円(<C>)位づつ返済していることなどの事情が存することを認めることができる。
そうすると、抗告人法定代理人の年収入は、上記<A>-(<B>+<C>×12) = 166,312円となるから月額にすれば平均金一万三、八五九円となり、これに原審判で認定した駄菓子商による収入月額金二、五〇〇円と相手方からの扶養料送金分金四、五〇〇円を合算した金二万〇、八五九円が抗告人とその法定代理人の生活費ということになる。
以上認定した抗告人法定代理人の収人と原審判で認定した相手方の収入および双方の最底生活費を比較検討し、これに原審判説示の双方の特殊事情などを勘案すると、相手方は抗告人に対し、従前の扶養料金四、五〇〇円に金八〇〇円を増額した額を、事情変更があつたと認められる昭和四〇年一一月から(原審判説示のように相手方の母の病気、相手方の金五〇〇円の割賦弁済の完了時を特に考慮した)支払うのが相当であると思料する。
よつて、本件抗告を理由あるものと認め、再度の考案をしたうえ、主文のとおり審判する。
(家事審判官 寺沢光子)